くも膜下出血の後遺症、リハビリ|回復期リハビリテーション.net

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くも膜下出血になってしまったら

くも膜下出血ってどんな病気?

脳を覆っているくも膜と脳の間は脳脊髄液があり「くも膜下腔(くもまくかくう)」と呼ばれ、その中を脳血管が走っています。くも膜下出血とは何らかの原因でこのくも膜下腔に出血した病態の総称をいいます。脳卒中全体の死亡率は年々減少してきましたが、くも膜下出血の発症数や死亡数は殆ど変化がありません。年間2万人程度の人が発症します。

脳卒中の種類

くも膜下出血の原因は?

脳動脈瘤の破裂によることが最も多く、ほかには脳動静脈奇形などからの出血、事故や転倒などによる頭部の外傷などがあります。

脳動脈瘤の破裂

脳動脈瘤とは脳の血管の一部が膨らみ瘤(コブ)ができた状態のことです。風船と同じように膨らんでしまった部分の血管壁は引き伸ばされ薄く・弱くなってしまい、破裂するとくも膜下出血を引き起こします。場合によっては瘤が脳内にめり込んでおり脳内出血を呈する場合や、脳内にある脳脊髄液をためている部屋(脳室)に流れ込んだり、くも膜の外にまで広がり急性硬膜下出血を呈することもあります。

脳動静脈奇形からの出血

脳血管の発生異常によって動脈と静脈が直接繋がり、蛇がとぐろを巻いているような異常血管が脳動静脈奇形です。若年期に破裂・出血しやすいとされています。

くも膜下出血の症状は?

くも膜下出血は、何の前触れもなく発症時に症状が現れることが多いため「突然死」としても有名な病気です。

脳動脈瘤の破裂

数日前から血圧の乱れ、頭痛やめまい、吐き気やおう吐、けいれんといった症状が前兆としてみられることがありますが、殆どは「後頭部をハンマーで殴られたような強烈な痛み」と表現されるほどの、今までに経験したことのないような突然の激しい頭痛が起こります。その後、吐き気やおう吐、意識を失うなどといった症状を伴うことも多くあります。

脳動静脈奇形からの出血

けいれん発作が最も多く、頭痛や吐き気、意識障害を呈し、出血の部位によって片麻痺、失語症など様ざまな症状が現れます。

くも膜下出血の合併症は?

脳動脈瘤破裂後の合併症として、以下の様なものがあります。

  • 1脳脊髄液の流れが悪くなって脳の中に脳脊髄液が貯留する「水頭症」という病態を引き起こす場合(急性期と慢性期に起こりえます)。
  • 2出血の4日目以降から2週間以内に脳血管攣縮(れんしゅく)と言って脳血管が細くなり、血液が途絶えて脳梗塞を起こす場合があります。
  • 3また、心電図異常や肺水腫・肺炎など心肺機能の障害を呈する場合もあります。

くも膜下出血の治療方法は?

急性期の治療は、血圧の管理が大切となり、脳動脈瘤破裂の場合は、以下の様な治療があります。

  • 1「血管内外科治療;コイル塞栓術」
    股の血管からカテーテルを挿入し、血管内からプラチナ製のコイルで動脈瘤を詰めてしまいます。
  • 2「開頭クリッピング術」
    頭蓋骨の一部を外し手術で脳動脈瘤の首の部分をチタン製のクリップで止めてしまいます。
  • 3「脳脊髄液ドレナージ術」
    急性水頭症に対しては、頭蓋骨に小さな穴を開け脳脊髄液を体外に排出します。
    脳動静脈奇形の場合は、大きさや部位を十分に考慮したうえで、外科的摘出術・血管内塞栓術・放射線治療(ガンマ線)などが適用とされています。

くも膜下出血発症後の後遺症は?

出血した部位や出血量、発症後から治療に至るまでの時間、合併症の有無などに応じて、症状や後遺症も様々です。軽度の場合は治療後も今までと同じような生活を送ることもできますが、脳出血・脳血管攣縮後の脳梗塞・水頭症などを呈した場合には、運動麻痺や感覚障害が残ったり、食べ物や水を上手に飲み込むことができない(嚥下障害:えんげしょうがい)、視野が狭くなるなどの局所症状に加えて、高次脳機能障害(言葉がうまく話せない・言葉の理解がうまくできないなどの失語症、半分の空間がうまく認識できない、最近の出来事を直ぐ忘れてしまう、注意・集中ができない、意欲や自発性がない、物事をうまく実行できない、用途が判らないなどの認知や行動の障害)、歩行不安定、尿便失禁などの後遺症が残る場合もあります。

脳疾患(脳障害)の後遺症

後遺症の名称 主な症状
運動麻痺 運動麻痺 右上下肢あるいは左上下肢が動かなくなる症状。痙性麻痺と弛緩性麻痺があり、一般に麻痺は下肢よりも上肢に強いことが多い。出血が生じた部位によっては下肢に強い場合も。
感覚障害 感覚障害 触覚や痛覚が鈍くなる場合と逆に過敏になり痺れを感じる場合がある。発症後半年くらい経ってからしびれが強くなるケースも。
目の障害 目の障害 視野が狭くなったり、物が二重に見える「複視」という障害、片目の視野が見にくくなる「半盲」という障害もある。発症後長期間にわたって症状が残る場合がある。
構音障害 構音障害 いわゆる呂律の回りにくさで、比較的回復しやすい場合と症状が長期にわたり残りやすい場合がある。
嚥下障害 嚥下障害 食べ物を飲み込みにくくなる症状で、大脳の片側に病変が限られている場合は回復が見込めるが、出血の生じた部位によっては回復が難しい可能性も。
高次脳機能障害 高次脳機能障害 脳の損傷により神経に異常が起こり、体に麻痺や五感への障害が発症することをさす。一口に高次脳機能障害といっても、表れる症状はさまざま。
失語症 言葉が出にくくなる「運動性失語」と、言葉を理解できなくなる「感覚性失語」がある。文字の理解や、文字を書くことができなくなる症状を伴うことも。
半側空間無視 外界の半側(主に左)に注意が向かない症状で、顕著な場合にはリハビリの妨げに。身体失認は手足が動かないことなどを否定する症状で、半側空間無視に伴うことが多い。
記憶障害 言われたことや読んだものを忘れる言語性記憶障害や、道順を忘れる地誌的記憶障害、記憶の前後がわからなくなり見当識が悪くなる症状など。
注意障害 一つのことから他のことに注意を転換することの困難などがある。
自発性障害 自ら進んで動作に移れない、話せないなどの症状が起こる。

くも膜下出血のリハビリテーションについて

発症・治療直後は全身状態が変化しやすく、再度危険な状態になりやすいため生命維持が優先されますので、超急性期のリハビリテーションは議論があるところです。治療後〜14日はベッド上でのリハビリテーションが中心となりますが、全身状態に問題なければ安静にしておかなければならない理由はなく、病状に応じて徐々に起床、ベッド周辺でのリハビリテーションを開始します。
急性期病棟・病院から回復期リハビリテーション病棟・病院への転出は、少なくとも急性期の治療(脳血管攣縮を含む)終了後となりますので、急性期治療後14日目以降が一般的です。
急性期病院でリハビリテーション中に脳室(腰椎)−腹腔短絡術(脳脊髄液のバイパス術)が必要な場合もありますが、回復期リハビリテーション中にも回復が遅延したり、逆に悪化した場合は、水頭症が徐々に進行している状態(慢性期正常圧水頭症)と判断し、脳室−腹腔短絡術(脳脊髄液のバイパス形成)のため、一時的に急性期病院への転院治療が必要な場合もあります。 勿論、治療後リハビリテーションを再開します。